今日の記事は、
- フリーランスと会社員では社会保障はどう変わるの?
- フリーランスには損害賠償リスクがあるって本当?
- フリーランスが入ったほうがよい保険はなに?
こういった方のために書きました。
フリーランスは会社員にくらべて自由な働き方ができる反面、社会保障が少ないというデメリットがあります。
また、仕事に対しての責任をひとりで背負うため、損害賠償リスクに備える必要もあるのです。
この記事では、FP2級保有者である筆者が、フリーランスになる方を対象に、独立前に確認しておきたい社会保障や保険について解説します。
対策についてもお伝えしていくので、しっかり準備を進めましょう。
フリーランスになるなら確認しておきたい社会保障と保険の注意点
フリーランスになるなら知っておきたい保険や社会保障の注意点は、以下の3つです。
- 健康保険の保障内容や保険料が変わる
- 老後や死亡、働けないときの保障が減ってしまう
- 業務中のトラブルで損害賠償責任を負うリスクがある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
健康保険の保障内容や保険料が変わる
フリーランスは、会社員のときに入っていた健康保険(被用者保険)に加入できません。
会社をやめると、基本的には国民健康保険に加入することになります。
国民健康保険に切り替わることで、保障内容や保険料が変わってしまうことに注意が必要です。
【健康保険と国民健康保険の違い】
健康保険 (被用者保険) |
国民 健康保険 |
|
対象者 | 労働者とその家族 | 自営業者、退職者、無職者など |
医療費の負担割合 | 原則3割 | 原則3割 |
保険料負担 | 会社と労働者で折半 | 全額 自己負担 |
扶養家族への 保険適用 |
あり | なし |
扶養家族分の 保険料負担 |
なし |
あり |
保険料の納付 | 給与天引き | 自分で納付 |
傷病手当金 | あり | なし |
出産手当金 | あり | なし |
ここからは健康保険と国民健康保険の3つの違いについて、詳しく解説します。
- 傷病手当金や出産手当金がない
- 保険料が全額自己負担になる
- 「扶養」の制度がない
傷病手当金や出産手当金がない
健康保険にある傷病手当金や出産手当金といった保障が、国民健康保険にはありません。
- 傷病手当金:仕事を4日以上連続して休業した場合に、給与の3分の2の額が最大1年6ヶ月にわたって支給される
- 出産手当金:出産の日の前後98日間で会社を休んだ期間について、給与の3分の2程度の給付金が受け取れる
国民健康保険に加入する場合、この2つの給付が受けられなくなります。
保険料が全額自己負担になる
会社員が加入する健康保険の保険料は、会社と労働者が半分ずつ負担する仕組みです。
一方、国民健康保険の場合、保険料は全額自己負担になります。
「扶養」の制度がない
健康保険(被用者保険)には「扶養」の制度があります。
扶養家族(配偶者や子、孫など)に該当する場合、保険料負担なく健康保険の給付が受けられます。
一方、国民健康保険には扶養がありません。
国民健康保険に加入する場合、被保険者の家族は、一人ひとりが国民健康保険に加入する必要があり、保険料負担が大きくなってしまいます。
老後や死亡、働けなくなったときの保障が減ってしまう
フリーランスになる前に確認しておきたいポイントの2つ目は、会社を退職すると厚生年金保険に加入できないということです。
厚生年金に加入できない場合、例えば以下の給付が思ったとおりに受給できなくなるため、注意が必要です。
- 老齢厚生年金
- 遺族厚生年金
- 障害厚生年金
老齢年金の給付額は、それまで支払った保険料分しか受け取れなくなります。
また、遺族年金や障害年金は受給要件を満たせていないと全く受け取れません。
厚生年金の各種保障が受けられなくなるため、万が一の際に備えて自身で積み立てたり、民間の保険に加入したりする必要があります。
業務中のトラブルで損害賠償責任を負うリスクがある
フリーランスは受注した仕事の結果について、全責任を自分ひとりで背負うことになります。
仕事の責任を負うということは、クライアントに損害を負わせてしまうと、賠償請求される可能性もあるのです。
賠償額が少額なら、手持ち資金から支払えば問題ありません。
しかし、業務内容によっては高額な賠償になることから、賠償責任保険への加入を検討する必要があるでしょう。
フリーランスの健康保険の選択肢
会社を退職してフリーランスになる場合、国民健康保険に加入することが基本です。
しかし、国民健康保険以外の健康保険でも、条件が整えば加入できます。
保険料負担や給付内容が加入団体によって異なるため、少しでもよい条件の健康保険を見つけて加入するのがポイントです。
ここではフリーランスの健康保険の選択肢をご紹介しましょう。
健康保険の任意継続
会社員時代の健康保険には、退職後2年間に限って健康保険(被用者保険)に加入できる「任意継続」という制度があります。
任意継続するための要件は、以下の2つです。
- 資格喪失日の前日までに「継続して2ヶ月以上の被保険者期間」がある
- 資格喪失日から「20日以内」に申請する
保険料は全額自己負担ですが、計算方法が国民健康保険とは異なるため、任意継続のほうが安くなることがあります。
また、家族を扶養に入れられるのもメリットです。
一方、傷病手当金や出産手当金は、原則、給付されません。
国民健康保険組合への加入もあり
市区町村が運営している国民健康保険に対して、建設・医師・美容など、業種ごとに組織されているのが国民健康保険組合です。
どちらも国民健康保険法にもとづいた制度なので、基本的に給付内容は同じです。
一方、国民健康保険組合の保険料は定額のため、収入が一定以上ある方は国保より安く加入できます。
ただし、国民健康保険組合に加入する場合、まず業界団体の会員になる必要があります。
業界団体の会費負担が必要になることはもちろん、入会を断られる場合もあるため注意が必要です。
収入が少額であれば家族の扶養に入る方法も
家族に被用者保険の加入者がいる場合、その扶養に入るという選択肢もあります。
扶養に入る場合、傷病手当金や出産手当金も給付されます。
ただし、扶養に入る人の年間収入は、130万円未満であることが必要です。
フリーランスの老後や死亡、就労不能時の保障を補う選択肢
こちらでは、フリーランスの老後や死亡・働けなくなった際の保障について、まとめてみました。
国民年金基金
国民年金基金は、自営業者など国民年金第1号被保険者の老後保障を拡充する目的で創設された公的年金制度です。
一生涯にわたって受け取れる終身年金と、給付期間が決まっている確定年金から選ぶことができ、加入口数に応じて掛金や年金額が変わります。
給付内容には、老齢年金と遺族一時金の2つがあります。
国民年金基金の掛金は、全額が所得控除の対象になるため、税金がお得になるのがメリットです。
付加年金
付加年金も国民年金第1号被保険者を対象にした上乗せの年金制度です。
400円の付加保険料を毎月納付することで、老齢基礎年金にプラスして年金給付が受けられます。
上乗せされる年金額は「200円×付加保険料納付月数」です。
付加年金の保険料も、全額が所得控除の対象となります。
注意点として、国民年金基金との同時加入はできません。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、確定拠出年金法にもとづいて運営されている私的年金の一つです。
自身で運用方法を選択してリスク資産に投資できるため、他の年金制度よりも高い運用成果が期待できます。
一方で、元本割れのリスクがあることには注意が必要です。
給付内容には以下の3つがあります。
- 老齢給付金
- 障害給付金
- 死亡一時金
自営業者(第1号被保険者)の掛金上限は、国民年金基金または付加保険料の掛金と合算で、6万8,000円/月までです。
拠出した掛金は、全額が所得控除の対象になります。
なお、年金の受け取りは60歳からとなっており、それまでは原則、引き出すことができない点には注意が必要です。
小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主や小規模な中小企業の役員を対象として、廃業や退職した際の生活資金を積み立てる制度です。
一定期間以上加入することで、老齢給付金も受け取れます。
掛金は月1,000円~7万円まで500円単位で自由に選択できるため、収入が安定しづらいフリーランスにピッタリです。
さらに、掛金の範囲内で低金利の貸付制度が利用できるのも、魅力の一つだといえるでしょう。
小規模企業共済の掛金は、全額が所得控除の対象となります。
個人年金保険
老後資金の準備として民間の個人年金保険に加入するのも一つです。
個人年金保険は、受け取れる年金額が変動するかどうかによって、2種類にわかれます。
- 定額個人年金:受け取れる年金額が一定の商品
- 変額個人年金:保険料の運用実績に応じて年金額が変動する商品
生命保険会社によって商品の内容や利率に違いがあるため、複数の商品をくらべて検討するのがおすすめです。
全額ではありませんが、掛金が所得控除の対象になります。
ただし、所得控除を受けるためには、加入期間や年金受取期間などの条件をクリアした年金保険への加入が必要です。
終身保険・定期保険・収入保障保険
先ほどもお伝えしたとおり、フリーランスになると厚生年金保険に入れなくなります。
厚生年金に加入できないと遺族厚生年金が受け取れなくなるため、会社員時代に加入した生命保険の見直しが必要になります。
解約返戻金があるタイプなら終身保険、保険料を安くおさえたいなら掛け捨ての定期保険や収入保障保険を検討してみましょう。
就労不能保険・所得補償保険
健康保険(被用者保険)や厚生年金に加入できないフリーランスは、傷病手当金や障害厚生年金を受け取ることができません。
つまり会社員時代にくらべて、病気やケガで働けなくなった際の保障が少なくなるのです。
少なくなった保障を補うために、民間保険への加入を検討してみましょう。
たとえば所得保障保険は、病気やケガで入院したり、医師の指示で自宅療養したりしている期間の収入減少を補ってくれる保険です。
数日~2年程度の就労不能期間を保障してくれる商品が多く、傷病手当金の代わりになります。
一方、より長い期間働けなくなった場合の収入減少に備えたいなら、就労不能保険がおすすめです。
保障期間が所得補償保険にくらべて長く、重度の障害に備えることができます。
フリーランスの業務中の賠償リスクに備える選択肢
フリーランスは自由な働き方である反面、トラブルが起こったときの責任を、自分ひとりで負わなくてはなりません。
クライアントに損害を与えてしまうと高額な賠償請求を受けるリスクもあり、十分な備えが必要です。
そこでここでは、フリーランスにおすすめの賠償保険をご紹介します。
フリーランス協会:賠償保険
「一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(通称:フリーランス協会)」は、フリーランスを支援する活動を行う団体です。
フリーランス協会では、一般会員(年会費1万円)になることで、以下のような賠償保険の補償が受けられます。
- 対人事故
- 対物事故
- 情報漏洩
- 納期遅延 など
※すべて業務遂行中に限る
補償額は最大1億円となっているため、ほとんどのトラブルに対応できるでしょう。
その他、一般会員になると賠償保険以外に福利厚生の「WELLBOX」や、様々な優待も利用できます。
フリーナンス:フリーナンスあんしん補償
フリーナンスは、無料で利用できる収納代行口座サービスです。
クライアントからの報酬の振込みにフリーナンス口座を利用することで、賠償保険の補償が受けられます。
賠償額は最大5,000万円で、以下のような損害が補償対象です。
- 対人事故
- 対物事故
- 著作権侵害
- 納期遅延 など
※すべて業務中に限る
賠償保険への加入ために費用を支払う必要がないため、なるべく安く賠償保険に入りたい方におすすめです。
ちなみに、フリーナンスの口座に入金された報酬は、手数料無料で自身の銀行口座に振り替えられます。
損害保険会社の賠償総合保険
損害保険各社でも数多くの賠償責任保険が販売されています。
上記2つの賠償保険よりも補償範囲が広く、細かく補償を設定できるため、自身にピッタリな賠償保険に加入できるのが魅力です。
特殊な業務のために団体加入の保険では対象外になる方でも、補償を受けられる可能性があります。
保険会社に問い合わせてみるとよいでしょう。
まとめ
今日は、フリーランスが確認しておきたい社会保障と保険のお話でした。
フリーランスになると社会保障が少なくなり、なおかつ損害賠償リスクにも直面します。
万が一の際に備えて、自身でお金を積み立てたり民間の保険に入ったりして、準備することが大切です。
この記事をもう一度読み直して、自分に合った保障を見つけてみましょう。